2026年3月19日(木)外周整備と非耕地における強害雑草

農場日記

気象概況:雨による生態系の始動

本日は朝から雨模様となり、気温は10℃を下回る肌寒い一日となりました。数日前からの予報では雪の可能性も示唆されていましたが、幸いにもそこまでの冷え込みには至りませんでした。

連日の晴天と乾燥が続いていた中でのこの降雨は、圃場の生態系にとって大きな転換点となった感覚があります。土壌水分が供給されたことで、休眠状態にあった植物の芽吹きが加速し、それに応じるように地中の昆虫たちの活動も一気に活発化したようです。雨上がりの圃場に漂う独特の土の香りは、生物学的な活性が高まっている証左と言えるでしょう。

圃場入口の環境整備:フジおよび枯死木の伐採

本日の主要業務は、農場入り口付近に自生していたフジ(藤)および、そのフジに巻き付かれたことで枯死した立木の伐採作業です。 私は林業の専門家ではないため、樹高のある木の伐採には細心の注意を払いました。重心が不安定な枯死木を根元から一気に切り倒すのは、予測不能な方向への倒木リスクを伴います。そのため、高枝ノコギリや梯子を併用し、上部の枝から段階的に切り落として荷重を減らしていく「トップダウン方式」を採用しました。

このフジは、毎年5月後半には見事な花を咲かせ、春の終わりを告げる当農場の象徴的な景観の一部でもありました。景観維持の観点からは惜しい判断ではありましたが、フジの強靭な蔓(つる)に締め付けられた主木が完全に枯死しており、その重みで圃場の通路側に大きく傾斜していたため、安全確保を最優先に除去を断行しました。

伐採の過程で、フジの蔓が主木の樹皮を突き破り、形成層を圧迫するように深く食い込んでいる様子が観察されました。つる性植物の物理的な締め付けがいかに強力であるか、そしてそれが樹木の通導組織を阻害し、死に至らしめるプロセスを改めて実感しました。切り出した枝やつるについては、その強靭な物性を活かした工作資材や、将来的な活用を視野に入れ、一箇所に集積・保管しています。

非耕地における「三大強害雑草」の選定

農業経営において、栽培種の管理と同等に労力を要するのが雑草対策です。特に圃場外縁部や休耕地などの「非耕地」に繁茂する植物は、耕地内の雑草とは異なる戦略的な対応が求められます。つる性雑草は、草刈機のシャフトへの巻き付きによる過負荷や、手作業での切断の困難さなど、物理的な作業効率を著しく低下させます。

一般に「強害雑草」の定義は文脈により異なりますが、これまでの実地経験に基づき、特に対応が困難な3種を独断で選定し、その特性と対策を分析しました。

第3位:ギシギシ(Rumex japonicus)

タデ科の多年草であるギシギシは、その強靭な直根(地下茎)が最大の脅威です。

  • 厄介な性質: 地下深くまで伸びる太い根は、耕耘機等で裁断されると、その断片一つひとつから定着・再生する能力(栄養繁殖能力)を持っています。うかつに物理的な防除を試みると、かえって個体数を倍増させる結果を招きます。また、種子の生産量も多く、土壌中での寿命も長いため、シードバンクを形成しやすい性質があります。

  • 脆弱性と対策: 幸いにも、グリホサート成分を含む非選択性茎葉散布除草剤に対する感受性は比較的高いため、成長期に確実に薬剤を移行させることで根絶が可能です。物理的防除よりも化学的防除が先行すべき種であるため、この順位としました。

第2位:ヤブガラシ(Causonis japonica)

「貧乏葛」の異名を持つブドウ科のつる性植物です。

やぶがらし,駆除

  • 厄介な性質: つるが非常に柔軟で伸長速度が速く、周囲の農具や草刈機に瞬時に絡みつきます。最大の問題は、地下に張り巡らされた白く太い根茎です。地上部を刈り取っても、根茎が残っている限り無限に再生します。また、根茎が非常に脆く、手で引き抜こうとしても途中で千切れてしまうため、完全な物理的除去は事実上不可能です。

  • 対策: ギシギシ同様、グリホサート系除草剤の活用が合理的ですが、他の植物に絡みついていることが多いため、散布時には周囲への飛散(ドリフト)に細心の注意を払う必要があります。

第1位:クズ(Pueraria lobata)

非耕地における「キング・オブ・雑草」であり、世界の侵略的外来種ワースト100にも選ばれる最強の強害雑草です。

クズ

  • 厄介な性質:

    1. 圧倒的な生長量: 1日で数十センチメートル伸長することもあり、短期間で周辺の樹木や構造物を完全に被覆します。被覆された樹木は光合成を阻害され、今回のフジの事例のように枯死に至ります。

    2. 木質化: 年月を経たつるは太く木質化し、もはや「草」ではなく「木」として振る舞います。こうなると通常の草刈機では刃が立たず、チェンソーや特殊なカッターが必要になります。

    3. 巨大な貯蔵根: 地下にはデンプンを蓄えた巨大な塊根を形成します。このエネルギー貯蔵量があるため、地上部を何度刈り取っても容易に再生します。

  • 対策: 一般的な除草剤では地上部の焼灼に留まることが多く、根絶には「クズコロン」等の専用除草剤を株元に直接処理するか、高濃度の薬剤を根茎に注入するなどの、ピンポイントかつ高強度の対策が不可欠です。人間側の対策をあざ笑うかのような進化を遂げており、非耕地管理において最も警戒すべき対象です。

以上のランキングは非耕地を想定したものですが、耕地内であれば、メヒシバやスギナ、あるいは難防除雑草であるオモダカなどが上位に食い込んでくるでしょう。環境に応じた雑草の動態把握は、農場管理の基本と言えます。

今後の業務スケジュールと連絡事項

明日以降は、以前から予定されていた研究調査事業の集中打ち合わせ期間に入ります。これに伴い、圃場での実作業および日誌の更新は一時休止いたします。次回の更新は、来週月曜日(3月23日)を予定しています。

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