水たまりができるのに、乾くとカチカチ…その原因は?
「うちの畑、水をやるとすぐ水たまりができるのに、乾くと板みたいに固まっちゃうのよね……」
そんな悩みを抱える初心者は少なくありません。実は、良い土には「水はけが良いのに、水持ちも良い」という、一見すると矛盾した性質が備わっています。
つまり、良い土とは「無駄な水をサッと逃がし、必要な分だけを蓄える力」があるということです。
前回、土は岩石が風化したものや植物の遺骸などが、長い年月をかけて混ざり合ったものだと学びました。
今回は、栽培を始めてすぐに直面する「土壌水分」の正体を、この3要素の視点から紐解いていきたいと思います。
三相分布を理解しよう
三相分布とは
三相分布とは、土壌内の固相(固体の部分)、気相(気体の部分)、液相(液体の部分)の3つの容積比率を指します。三相分布は土壌の物理的性質を示すものですが、後で解説する「団粒構造」が関与するため、養分の保持力や根の伸長のしやすさも関わってきます。

土壌の三相分布は、前回学んだ土壌の種類(成り立ち)によってある程度は決まってしまいます。一方、有機物を施用するなど土壌改良によって少しずつ改良することもできます。ではどうして有機物を施用することで土壌が改良できるのでしょうか。次にその仕組みをみていきましょう。
有機物と三相分布
有機物は土壌中で粒子と粒子を結合させて小さな塊りをつくります。これを団粒構造と言います(後で解説します)。この団粒構造の中には、さまざまな大きさの「すき間」があります。これを孔隙(こうげき)と言います。孔隙はその大きさによって機能が異なります。まず大きい孔隙は、すき間なので気相の占める割合が大きいです。もし水が流れ込んできても、そのまま流れ出てしまいます。一方、小さい孔隙では水を保持することができるため、液相の占める割合が大きくなります。では、なぜ小さい孔隙は水を保持できるのでしょうか。

答えは毛細管現象によって、小さい孔隙では水を保持できるためです。毛細管現象とは細い管の中を液体が重力の力に逆らって上昇する現象です。主に静電気力が影響していると言われています。この小さい孔隙の多い土壌が「水持ちのよい土壌」となります。有機物を施用することで大小さまざまな孔隙ができ、大きい孔隙は水を地下に流すため「水はけのよい土壌」として作用し、小さい孔隙が水持ちのよい土壌として作用する。これが冒頭に述べたよい土と言われるものです。
このように、たい肥などの有機物を施用することで土壌改良効果を得られます。たい肥は団粒構造を作る効果が高いため、より水管理のしやすい圃場に改良することができます。

土壌水分とpF
土壌にどの程度の水が含まれているか、という値はいくつもありますが、実務面を考えると今回紹介するpF(ピーエフ)が最も有効なので紹介していきます。
pF値は土壌の保水性を示す値であり、おおざっぱに言うと「その土壌から水を引き出すのにどれだけの力が必要か」を表したものです。pF値が低い程、その土壌から水を引き出す力が小さい=水が豊富にある状態、逆にpF値が高い程、その土壌から水を引き出す力が大きい=水が十分にない状態を指します。
pF値が0の場合
その土壌に最大量の水が含まれた状態です。畑であれば土壌がじゃぶじゃぶの状態と考えて下さい。三相分布で言うと、固相と液相しかない状態です。これを最大容水量と言います。この状態は過湿に近い状態ですが、雨などの水の供給が止まり、一定時間経つと土壌が保持できない水は重力によって土壌の外へ流れ出ます(この流れ出た水を重力水と言います)。
pF値が1.7付近
先ほどのpF値が0の状態から一定期間経ち、重力水が全て流れ出た状態です。土壌には重力水が流れ出たため気相が現れ、重力に逆らって水分を保持できる毛菅水が残った状態です。この状態が作物にとって最も水を吸収しやすく、水が十分にある状態と言えます。これを圃場容水量と言います。栽培管理上、最も理想の状態の場合が多く、pF1.7を維持するような管理が求められます(作物によって異なるので注意が必要です)。
pF値が3.0付近
乾燥が進みpF値が3.0になると毛菅水のつながりが途切れ始めます。このため、毛菅水の移動がなくなり作物がしおれ始めます。このpF値3.0付近を正常生育阻害水分点と言います。作物管理上、pF値1.7から少なくとも3.0以内で管理する必要があります。
pF値が3.8以上
pF値が3.8を超えると根が吸水できなくなり萎れが見え始めます。これを初期しおれ点と言います。さらに乾燥が進みpF値が4.2以上となると、水を与えても萎れが回復しなくなります。これを永久しおれ点と言います。
pFメーターを活用したかん水管理
圃場の水管理はだいたいの場合、「経験で培われた感覚」で行われています。ベテランの感覚は優れたセンサーのように働くこともありますが、逆に思い込みで誤った管理をしているケースもしばしば見受けられます。やはりきちんと客観的な水管理のためには、pF値などのデータを活用した水管理をお勧めしています。
かん水を数値を目安に管理することで収穫量を増加させる人も多いです。筆者が現地指導をした中では、かん水管理が不十分な人が多い印象です。そういう人にpFメーターを使った管理方法を導入すると全体的に生育が改善するケースが多かったです。以下は農林水産省が提示している事例ですが参考となると思います。
pFメーターはデジタル製品よりもアナログ式製品(大起工業製など)が使いやすいので、pF値を活用した水管理の第一歩としておススメしています。圃場内の代表的な場所で計測するか、複数(3a程度のハウスで3本程度)使って、その平均値を使うとよいです。



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